上司が答えを持って入ると、面談は報告会になる
1on1がうまくいかない職場には、共通の景色があります。上司が先に「最近どう?」と聞き、部下が「特に問題ないです」と答える。上司が用意していたアドバイスを話し、部下が「はい」と受ける。30分が終わります。
この面談で起きているのは対話ではなく、確認です。上司はすでに「この部下にはこう言おう」を持って部屋に入っています。部下はそれを察して、上司の欲しい答えを返します。
悪意はどこにもありません。ただ、部下が自分の考えを口に出す場面が、一度もないだけです。
そして次の月も同じことが起き、半年後に「1on1は形骸化している」という話になります。制度そのものが疑われますが、悪いのは制度ではありません。
広げてから、絞る
対話には順番があります。先に広げて、あとから絞る。この順番が逆になると、面談は必ず報告会になります。
たとえば「今、気になっていることを5つ挙げてみて」と聞く。多くの人は3つ目までは用意した答えを言い、4つ目から本音が出てきます。1つだけ聞くと、用意した答えしか出てきません。
5つ出したあとで「この中で一番引っかかるのはどれ?」と絞る。ここで選ぶのは部下です。上司が「これが重要だと思う」と選んでしまうと、また報告会に戻ります。
最後に「じゃあ明日、何を1つやってみる?」まで降りる。行動が1つ決まって初めて、面談は終わりです。
広げる、絞る、決める。この三段が揃うと、30分の面談から具体的な行動が1つ残ります。三段のどれが欠けても残りません。
自分で出した答えだけが、行動になります。
「答えを出してあげる」をやめる
上司にとって一番難しいのは、答えを言わずに待つことです。答えは自分のなかにあるし、言えば早い。実際そのほうが早く終わります。
ただし、上司が出した答えは部下の中に残りません。翌週には忘れられ、また同じ相談が来ます。自分で出した答えだけが、行動になります。
沈黙が続くと、多くの上司は5秒ももちません。気まずさを埋めようとして、つい先に話してしまう。しかし部下が考えているのは、たいていその沈黙の中です。ここを待てるかどうかで、面談の質が変わります。
1on1の目的が「指示を伝えること」なら、面談の形をとる必要はありません。会議で足ります。面談の形をとる理由は、部下が自分の考えを言葉にする場をつくるためです。
制度だけ入れても回らない
1on1を導入する会社は増えました。ところが「やり方は各自にお任せします」で始まることが少なくありません。
結果として、上司の元々の面談スタイルがそのまま残ります。詰める人は詰めるし、雑談で終わる人は雑談で終わる。部下から見れば、上司によって当たり外れのある制度になります。
回すために要るのは、頻度のルールではなく、進め方の型です。全員が同じ順番で聞く。そこが揃って初めて、1on1は制度として意味を持ちます。
自社で確かめられること
直近の1on1を思い出して、こう数えてみてください。30分のうち、上司と部下のどちらが長く話していましたか。
上司のほうが長かったなら、それは面談ではなく面接です。話す時間の比率は、面談の質をいちばん簡単に測る物差しになります。