2026年5月15日組織の対話

「言ったはずだ」が消えない職場は、何を失っているのか

伝え直し、確認、手戻り。どれも成果には計上されないのに、確実に時間を使っています。伝達のコストは、見えないところで積み上がります。

成果に出ない仕事

「あれ、お願いしていた件どうなってる?」「え、そちらでやると思っていました」。

この二往復で、その日の30分が消えます。しかもこの30分は、どの数字にも残りません。売上にも、工数にも、評価にも出てこない。だから誰も問題だと思わないまま、翌週も同じことが起きます。

伝達のやり直しは、業務ではなく損失です。ところが「コミュニケーションの問題」と呼ばれた瞬間に、なんとなく仕方のないもの、個人の相性の問題として扱われてしまいます。

設備の不具合で毎週30分止まる工程があれば、すぐに改善案件になります。同じ30分が会話の行き違いで消えているとき、案件にはなりません。見えないからです。

なぜ「ちゃんと伝えた」のに伝わらないのか

伝えた側には、たいてい落ち度がありません。メールも送った。口頭でも言った。それでも伝わらない。

起きているのは、こういうことです。伝えた側は「全体の方向」を伝えたつもりでした。受け取った側は「具体的な手順」を待っていました。方向を聞いた受け手は「まだ何も決まっていない」と受け取り、動きませんでした。

どちらも嘘をついていません。同じ会話の、違う部分を持ち帰っただけです。

そしてこのズレは、伝えた直後には見えません。両者とも「話は済んだ」と思って別れます。姿を現すのは締切の前日、あるいは当日の朝です。そこから巻き返すために、本来なくてよかった残業が発生します。

伝達のやり直しは、業務ではなく損失です。

「気をつける」では止まらない

この手のズレに対して、多くの職場がとる対策は「気をつける」です。もっと丁寧に伝える。もっとこまめに確認する。

しばらくは効きます。そして忙しくなると、必ず元に戻ります。気をつけることは、余裕があるときにしかできないからです。そして伝達ミスがいちばん増えるのは、余裕がないときです。対策が必要な場面で対策が機能しない、という構造になっています。

止まるのは、伝え方に「型」があるときだけです。誰が誰に伝えるときも同じ順番で、同じ項目を埋める。型があれば、忙しくても抜けません。個人の丁寧さに頼らなくてよくなります。

工程にチェックリストを入れるのと同じ発想です。作業者の注意力を上げるのではなく、注意力が落ちても抜けない形にする。会話にも同じことができます。

「確認しなかったほうが悪い」で終わらせない

行き違いが起きたあと、職場でよく交わされるのは責任の話です。伝えた側が悪いのか、確認しなかった側が悪いのか。

この議論に答えは出ません。どちらにも言い分があり、どちらも自分の側から見れば正しい。そして議論した結果、次から気をつけようという結論になり、また戻ります。

問うべきは、誰が悪いかではありません。「この伝達に、抜けを止める仕組みがあったか」です。なかったのなら、次に同じことが起きるのは当然で、そのときも誰も悪くありません。

自社で確かめられること

先月、社内で「言ったはずだ」が起きた場面を3つ書き出してみてください。

3つとも別の人どうしで起きていたなら、それは相性の問題ではありません。伝え方が個人任せになっている、という組織の問題です。

逆に、いつも同じ二人の間だけで起きているなら、対処はずっと簡単です。どちらの場合も、まず「どちらなのか」を見分けるところからです。

「うちはどうだろう」と思われたら。

自社の状態は、内側からはいちばん見えにくいものです。ACA-JAPANは、まず現状を伺うところから始めます。研修の押し売りはしません。

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