良い研修ほど、当日で完結してしまう
研修の当日、参加者の反応は良かった。気づきがあったという声も多い。ところが3週間後に現場を見ると、何も変わっていない。
これは珍しいことではなく、むしろ標準的な結果です。理由は単純で、人の行動は「知った」だけでは変わらないからです。
変わるには3つの条件が要ります。使う場面があること、使ったことに反応が返ってくること、続けても浮かないこと。単発研修はこのうち1つも用意していません。だから戻ります。
皮肉なことに、満足度の高い研修ほどこの落とし穴にはまります。当日の完成度が高いと、それだけで終わった気になるからです。アンケートの点数は、定着の予測にはなりません。
「使う場面」を先に決める
研修で学んだことが最初に試されるのは、翌日の現場です。ここで一度でも使われれば残り、使われなければ消えます。
ところが多くの研修は、学んだ内容を「いつ、どの場面で使うか」を決めずに終わります。参加者は職場に戻り、目の前の仕事に追われ、使う機会を見つけられないまま忘れます。
対策は、研修の最後に抽象的な決意表明をさせないことです。「これからは相手の話をよく聞きます」では、翌日には何も起きません。「明日の朝会で、この聞き方を1回だけ使う」まで具体化する。場面が決まっていれば、忙しくても実行されます。
一度使えば、手応えか失敗かのどちらかが返ってきます。どちらでも構いません。反応が返ってきた時点で、それは知識ではなく経験になります。
人の行動は、「知った」だけでは変わりません。
一人で頑張らせない
もう一つ、見落とされがちな条件があります。周囲との温度差です。
研修を受けた一人だけが新しい聞き方を始めると、周りからは浮いて見えます。「急にどうした」と言われれば、たいていの人はやめます。悪気があるわけではなく、居心地の問題です。
だから研修は、個人ではなくチーム単位で受けたほうが定着します。全員が同じ言葉を持っていれば、新しいやり方は「浮いた行動」ではなく「共通のやり方」になります。
とくに上司が受けていない状態で部下だけが受けると、ほぼ確実に戻ります。上司から見れば、部下のやり方が急に変わったようにしか見えないからです。
研修は「イベント」ではなく「起点」
研修当日を目的地だと考えると、当日の完成度に力を注ぐことになります。良い講師を呼び、良い資料をつくり、良い場をつくる。
しかし研修は起点です。本番はその後の数か月にあります。だとすれば、当日にかける労力と同じくらい、その後の設計に労力をかける必要があります。
翌週に何を確認するのか。1か月後に誰が声をかけるのか。3か月後に何をもって定着したと判断するのか。この3つが決まっていない研修は、当日どれだけ良くても消えます。
自社で確かめられること
過去に実施した研修を一つ選んで、こう聞いてみてください。「あの研修で習ったこと、今も使っている人はいますか」。
名前が挙がらないなら、その研修は費用ではなく、時間ごと消えています。悪かったのは内容ではなく、そのあとの設計です。