2026年6月15日マネジメント

優秀な人ほど、部下に伝わらないことがある

自分が伸びた方法を、そのまま部下に渡している。善意でやっているのに、なぜか届かない。優秀なマネージャーほど陥りやすい構造があります。

自分に効いた方法は、自分に合っていた方法

現場で成果を出してきた人がマネージャーになると、まず自分のやり方を教えます。当然です。それで結果が出たのだから、いちばん確かな方法です。

ところがここに落とし穴があります。その方法が効いたのは、それが優れた方法だったからではなく、その人の情報の受け取り方に合っていたからかもしれない。

全体像をつかんでから動くタイプの人が、同じタイプの部下に「まず全体を見ろ」と言えば伝わります。しかし手順から入るタイプの部下に同じことを言うと、「何から手をつければいいのか分からない」で止まります。

上司からは「動きが遅い」に見え、部下からは「指示が曖昧」に見えます。どちらも正しく、どちらも相手を誤解しています。

そして厄介なことに、上司のほうは成果を出してきた実績があります。だから「自分のやり方が正しい」という確信が強い。確信が強いほど、伝わらない理由を相手側に探すことになります。

「分かりやすく説明した」の落とし穴

伝わらないとき、私たちはたいてい「もっと分かりやすく言おう」とします。言葉を噛み砕き、丁寧に説明し直す。

しかし多くの場合、問題は難しさではありません。入口です。数字が欲しい人に情熱を語っても、丁寧に語るほど遠ざかります。手順が欲しい人にビジョンを語っても同じです。

同じ内容でも、相手が最初に受け取れる形は違う。だから伝え方は、話し手の得意ではなく、聞き手の受け取り方に合わせて選ぶ必要があります。

これは相手に合わせて媚びるという話ではありません。順番の問題です。数字から入って最後にビジョンを話しても、内容は何ひとつ変わりません。ただ、届くかどうかが変わります。

変えるべきは、相手の理解力ではなく、入口の選び方です。

相手のタイプを当てにいかない

ここで誤解されやすいのですが、目的は相手を分類することではありません。人を4つや8つの箱に入れて「この人はこういう人」と決めつけると、かえって関係が硬くなります。

必要なのは、自分の伝え方に癖があると知っておくことです。自分が無意識に選んでいる入口が一つあり、それが全員に効くわけではない。それだけ分かっていれば、伝わらなかったときに「相手の理解力」ではなく「入口の選び方」を疑えるようになります。

疑う先が変わると、打ち手が変わります。相手を責める代わりに、言い方をもう一通り試すようになる。それだけのことですが、部下から見た上司の印象は大きく変わります。

評価にも同じことが起きている

この構造は、日々の指示だけでなく評価にも及びます。

自分と同じ入口を持つ部下は、話が早く、指示が通り、成果も見えやすい。自然と高く評価されます。逆に入口の違う部下は、何度も説明が要り、動き出しも遅く見える。

本人にその意識はなくても、結果として「自分に似ている人が評価される組織」ができあがります。多様な人を採用しているのに、残るのは似た人だけ、という状態はここから生まれます。

自社で確かめられること

自分の指示が一番よく通る部下と、一番通らない部下を思い浮かべてください。

その二人の違いは、能力でしょうか。それとも、受け取り方でしょうか。もし後者だとしたら、変えるべきは部下ではありません。

「うちはどうだろう」と思われたら。

自社の状態は、内側からはいちばん見えにくいものです。ACA-JAPANは、まず現状を伺うところから始めます。研修の押し売りはしません。

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